東京高等裁判所 昭和47年(ネ)209号 判決
そこで≪証拠≫によれば、被控訴人と訴外会社間の船舶運航業務管理運営契約第四条には、訴外会社は被控訴人の総代理店(sole Agents)であり、(a)運送契約の締結又は解除、(b)船長、航海士、船員との雇傭契約の締結又は解雇、(c)船舶保険契約の締結、(d)海難救助の共同海損等の処理、(g)被控訴人の利益のため債務負担を伴う契約の締結、(h)本船に関する訴訟手続をなすこと等をなす権限を有する旨定められていることが認められる。これによれば、前記各行為はいずれも法律行為であり、訴外会社が被控訴人のためこれら各行為をなすについては、当然訴外会社が被控訴人を代理する権限を有することを前提としているものと解せられる。しかしながら訴外会社が本件船用品を購入したのは、第一項において認定した如く、同契約第四条(i)に基づいてなしたものと解すべきところ、船舶の装備および機械をいつでも完全な堪航能力を有するよう修繕しておくべき旨の約定の履行は、法律行為ではない事務の処理であり、本件の如き船用品の購入についても、他に特別に訴外会社にそのための代理権を授与する旨の約定の存しない限り、訴外会社が被控訴人の計算で、自己の名においてなしたものと解するのが相当であり、訴外会社の右船用品購入につき特に代理権を授与する旨の約定を認めるに足る証拠はない。そして≪証拠≫によれば、前記契約第四条には、他にも訴外会社に対し法律行為でない事務を委託する趣旨の約定をしていることが認められるのであって、以上によれば、被控訴人と訴外会社間の前記契約は、法律行為の委託と単なる事務の委託との混合したいわばわが国の商法の代理商と仲立人とを包含した一種特別の契約と解するのが相当であり、前記総代理店という約定もかゝる趣旨に解すべきである。
(石田哲 小林 関口)